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君に届くまで

第51章 反撃



カチャリと音がしてドアが開き、眩しい光が差し込んだ。

男は黙ったまま食べ物が乗った盆を足元に置くと、空の盆を下げ、そのままドアを閉めた。
カチャリと音がした後、ブンと音がして、また光の網がぼんやり浮かび上がった。
辺りは再び暗闇と静寂に包まれる。
頼れる明かりはレンの足元にある、電池式のランタンのみだ。

レンは立ち上がるとランタンを持ち、盆の中身を取りに階段を上がる。
今日も乾パンと水だけらしい。
こうした食事が1日に1回給付される。

今日も江藤は姿を見せなかったな、とレンは思う。
レンをここへ放り込んだ当初、勝ち誇ったように見下してきたことを見ても、なんらかの接触はしてきてもよさそうなのだが。
レンは、様子見のついでに嘲笑いに来るものと予想していただけに拍子抜けする。

しかしよく出来た牢だ、とレンは感心する。
唯一の出入り口は、鍵が掛けられると、ドアの手前から全体を覆うように電撃の網が張られる仕組みで、触れるだけで致命傷となる程の威力だ。

勝機があるとすれば1日1回。食料を運んでくる僅かな時間のみ。
あとは暗闇と静寂に包まれてしまい、足音一つ聞こえない。

逃げ出すことは出来なくはなかったが、レンの目的は政府の思惑通りになっていると見せること。逃げ出してしまったら、影分身で態々ここにいる意味がない。

「外はどうなっていることやら。」

レンの元には、江藤も来なければ政府の関係者も来なかった。
よってレンは外の様子を何も知らない。

レンは水と乾パンを持ち、元の場所に戻ってランタンを置くと、ゴロンと寝転んだ。
チャクラを節約するには、何もせずじっとしている方が効率がいい。

部屋の隅には、開封した乾パンの缶とペットボトルが各10個、未開封の乾パンとペットボトルが各10個綺麗に並んでいる。

「今日で21日目、か。」

レンは手元の乾パンを、手持ち無沙汰にくるくると回した。
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