第51章 反撃
加州は、ふらふらと審神者の住居棟へ戻って行く江藤を見ていた。
姿が見えなくなるのを確認して、長く息をついて肩の力を抜く。
「格好かったよ。」
燭台切は後ろからぽんと加州の肩に手を乗せる。
「やるじゃん、清光。」
大和守も加州の横に並んでぽんと背を叩く。
「見せ場を取られたな。」
鶴丸はそう言って困ったように笑い、その場で後ろ手をついた。
「しかし、あいつの顔傑作だったな。」
「ほんと。見るからに怯えてたね。」
薬研と乱が笑う。
「でも、ちょっとだけ可哀想な気もします。」
五虎退が少し困ったように言った。
「いいんじゃねぇか?あの位お灸据えたって。」
「レンも未だ解放されてないしな。こん位の意趣返ししたってバチは当たらないさ。」
太鼓鐘が言い、厚は五虎退の隣で肩を竦めながら五虎退を宥める。
それでも五虎退の気は晴れなかった。
気の優しい彼の中に、罪悪感が広がっていく。
「戦い…。ここを取り戻す。」
鳴狐は言いながら、五虎退の頭を撫でた。
「今は人間と戦っているのです。あの方を取り戻し、本丸を消させない為の戦いなのです。
情けをかければ討たれるのは我等です。」
お付きの狐が鳴狐の言葉を付け足していく。
「…僕もそう思う。」
小夜が五虎退に寄り添う。
「僕は、あの人を取り返す為なら何でもする。」
小夜は強い光を湛えた瞳で、ひたと五虎退を見た。
五虎退はその瞳を見返して、息を呑む。
五虎退の脳裏に、審神者を名乗る者達から受けた仕打ちが駆け巡る。
そして最後に、遠征に疲れ果てた五虎退を抱き上げたレンが思い出された。
あの日、もっと強ければと思ったのではなかったか。
「…僕も、主様を取り返したいです。」
そうだ。敵に情けは無用だ。
『殺意を向けられたのなら、殺意で応えるべきです。』
レンの言葉が蘇る。
敵意を向けられたなら、敵意を向けるべき。
“躊躇ったらダメ”だ。
「その為なら何でもします。」
五虎退の瞳にも強い光が宿った。