第51章 反撃
「お兄様!鶴丸国永はどうしましたの?」
女は住居棟に戻った江頭に駆け寄った。
だが、江藤はそれどころではない。
「お前が自分で行って来い。審神者だろう。」
この妹にあの刀剣達は荷が重いだろうとは思ったが、江藤にもどうすることは出来ない。
「そんな!お兄様が連れて来てくださると言っていたではありませんか!」
「無茶を言うな!あんなの俺がどうこう出来るわけないだろ!!」
何があったか知らない女は、その言葉に眉根を寄せる。
「お兄様までそんなことおっしゃるの?刀剣は主の命には逆らわないとお聞きしたからお引き受け致しましたのに!これではお話が違います!」
「いいか。ここでお前があの刀剣達を御せなければ、俺達の家は潰れるんだ。
あの女が国会で暴れてくれたおかげで、時の政府は縮小、今ある課は撤廃あるいは統合。
俺達は時の政府の恩恵があったからここまでのし上がれたんだ。ここが最後の砦なんだよ…!」
江藤は焦りを露わに早口で捲し立てる。
「え…?」
お家の危機を初めて知らされた女は、あまりの突然の事態に頭が真っ白になる。まさに青天の霹靂である。
「そんな…。」
女は顔を青褪めさせて、その場にぺたりと座り込んだ。
「…お前でも使える強い呪を俺ももっと調べてくるから、その間に何とか審神者としての役目を全うしろ。」
江藤は女の肩に手を置き、揺さぶるように励ますと、そのまま家を出て行く。
後に残された女は、俯き涙をこぼす。
「言っていることが滅茶苦茶ですわ…。」