第7章 五虎退の頼み
「こちらにおいででしたか。今日は五虎退殿もご一緒なのですね。」
こんのすけが何処からともなく現れた。
こんにちは、と五虎退がこんのすけに挨拶を返す。
「本日は、ご加減をお伺いに参りました。その後、傷は癒えましたか?」
「はい。熱も下がり問題ありません。」
レンがこんのすけに返すと、五虎退が不思議そうに問う。
「傷?」
「はい。主様はこちらにいらした時にお怪我をされていたのです。お怪我が元で、高熱も出ていらしたとかで。」
こんのすけが説明すると、五虎退は驚いてレンを見上げた。
「今は治っていますよ。」
とレンは付け加えると五虎退はほっとした様子を見せた。
「ところで、五虎退殿がご一緒とは珍しいですね。何かございましたか?」
こんのすけが尋ねる。
丁度良い、とレンは思い、聞いて見る事にした。
「五虎退の兄弟の手入れをするので、資材の在処を教えてください。」
こんのすけは些か驚く。
五虎退が居る時点で、そうではないかと思っていたが、手入れは審神者としての職務となる。
どうしたものかと頭を悩ませた。
「…あなた様は、この本丸で何もしなくても良いのですよ。」
「そう言われはしましたが、五虎退から頼まれたので。」
「…しかし、手入れは神気を使うもの。あなた様の負担になるのでは…。」
こんのすけはしどろもどろに止めに入る。
そのやり取りを聞いていた五虎退は、必死にこんのすけに頼み込む。
「こんのすけさん!僕はどうしても薬研兄さんを助けたいんです!
僕、僕、何でもします!だから教えてください!お願いします!」
五虎退の必死の様子に、こんのすけは言葉を詰まらせ、表情を硬くする。
暫し逡巡した後、小さくため息をつくと、
「…わかりました。政府に確認して参ります。」
と言って、消えて行った。
漸く一歩進展、といったところか。
レンは五虎退に、今日は部屋に戻る様促した。