第7章 五虎退の頼み
一先ず広間に戻り、五虎退と廊下に並んで座り、外を眺める。
当然、話す事は何もない。
何だか妙な事になった、とレンはそわそわする。
そっと五虎退を伺い見ると、黙って雨の降り頻る外を眺めている。
沈黙を気まずいと思っていないのだろうか。
すると、レンの視線を感じたのか、五虎退はレンを見上げると首を傾げた。
「手品を見たくはありませんか?」
レンは沈黙に耐えられず、そっと聞いてみる。
すると五虎退は、ぱっと笑顔になり、大きく頷いた。
レンは氷遁の基礎の印を組むと、はらはらと雪を降らせて見せた。
「わぁ…!雪!」
五虎退は歓声を上げて喜んだ。
レンの雪は溶けにくく、結晶もくっきりと形が造られている。
手に乗せて見ることができるので、旅先では評判の良い芸の一つだった。
五虎退も嬉しそうに手の平に結晶を乗せて、しげしげと眺めている。
掴みは良好の様だ。
「冷たくてキレイですね!」
「気に入りましたか?」
「はい、とっても!」
それならと、レンは暫く雪を降らせて見せた。