第51章 反撃
「どうして?前の審神者は自分の名前をちゃんと教えてくれたよ。君の名前も知らないのにどうやって慕えばいいんだい?」
燭台切はさも当然のように言い放つ。
それを見て、江藤が眉を顰めた。
「あなたには、自分が付喪神である自覚がないのですか?」
江藤から問われた燭台切はにっこりと笑ったまま、何も答えない。
「…審神者の名を問うことは許されません。分をわきまえなさい。」
江藤は苛立ちを露わに強く出る。
それを受けて、燭台切は仄暗い笑みを浮かべた。
女は、教えられた知識とのあまりの落差に薄ら寒いものを感じずにはいられない。
「それでも…。それでも今日から私が審神者よ。私が貴方達の主なの。それは揺るがないわ!」
女は怒りに顔を歪めて言い放つ。
「加州清光!」
女から呼ばれた加州は、体がピクリと反応する。
女はそれを見て取り、ニヤリと笑う。
「喉が渇いたわ。今すぐにお茶を持ちなさい。これは命令よ。」
そう言って、玄関の奥へと消えていく。
江藤はそれを見送って、まだ動かない刀剣達に向き直る。
「聞こえたでしょう。審神者様の言う通りになさい。」
江藤は冷たい目で刀剣達を見下ろしながら、彼等を追い出しにかかる。
命令された加州は、射殺すような眼差しで江藤を見た後、フイと顔を背けた。そして向きを変え広間へと戻っていく。
ふつりふつりと他の面々も冷たい視線を外し、何も言うことなく広間へと戻って行った。