第51章 反撃
「主…ねぇ…。」
誰ともなくボソリと呟きが聞こえた。
女が彼等のひとりひとりを見ていくと、一様に冷たい目が返ってくる。
女の中にもやもやと不快感が湧き上がる。
ーもっと喜ぶと思っていたのに。
刀剣はその性質から、自らを使ってくれる人間を盲目的に慕うと聞いていた。
しかし目の前にいる刀剣達は、冊子で見た優しげな面立ちとは程遠かった。冷たく、敵意さえ感じられるような表情を浮かべている。
「…どうしてよ。もっと喜びなさいよ!私が今日から貴方達の主になってあげるのよ。何が気に入らないのよ!」
「なら名前を教えてよ。僕達の主になるんでしょう?」
燭台切が冷たく笑う。
「何故…、私の名前を知りたがるの?」
燭台切の冷たい笑みに、女の背に冷たいものが流れる。
女は、名前は教えてはならないものだと聞いていた。付喪神は真名を知れば審神者を害することも封印することも出来るからだと。
刀剣達もそれを弁えているから、審神者の名を知ろうとはしないものであると。
なのに何故名を問うのか。