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君に届くまで

第7章 五虎退の頼み


レンは言われた通り、”こんのすけ”と試しに呼んでみるも何も起こらない。
まぁ、そうだろうなとレンは思っていた。それらしき契約を何もしていないのだから。

「な、なんで?」

しかし、五虎退は心底不思議そうだった。
そんなにあり得ない事なのかと思いつつも、レンは説明をする。

「私は、こんのすけと契約や盟約を何も取り交わしてはいないので、たぶんそのせいですね。」

「そんなことってあるんですか?審神者なのに…。」

「まぁ、”何もしなくていい”と言うことは”権限が何も無い”ということなのだと思います。」

それを聞いた五虎退は絶句した。
それは最早審神者と言えるのか…。
しかし、レンに気にした様子はない。

「気は進みませんが、燭台切を尋ねてみましょうか。」

レンはそう切り出したが、はたっと気づく。
燭台切の部屋は相部屋で、鶴丸がいる。
五虎退の事は彼に知られない方がいいかもしれない。
そうなると、燭台切が1人の時を狙わなければ。

燭台切が1人になる時と言ったら料理をする時間帯だ。
生憎今日は雨で太陽の位置はわからないが、まだ夕方までには程遠いだろう。
そうなれば、一度広間に戻って時間を潰した方が良さそうだ。

とすると、五虎退をどうしようか、と悩んだ。
そっと五虎退を見るとレンの方を不思議そうな顔で見上げている。

「五虎退、私は一度部屋に戻りますが、一緒に来ますか?」

まあ、断るだろうと踏んで提案をする。

「はい。一緒に行きます。」

と、ふんわり笑いながら了承の意が返ってきた。
レンは驚いた。

「私と一緒にいて大丈夫ですか?すごく怖がっていた様に思うのですが…。」

レンは戸惑いがちに聞いてみる。

「はい。最初は怖かったですが、今は怖くありません。
主様の側にいるのは、とても心地が良いです。
まるで冬の朝の様な、すっきりとした澄んだ香りがします。」

「はあ…。そう、ですか…。」

そんなものなんだろうか…。
レンは、そんなこと言われたのは初めてだった。
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