第50章 主、幽閉
「そう。レンはこうも言ってた。
自分が反撃すれば、政府に危害を加えたことになり、政府はそれを大義名分にする、って。」
「それでも、反撃すればいいだろう。何も現代に逃げる必要なんてない。」
鶴丸は不機嫌を隠しもせず言い放つ。
加州はそれを聞いて苦笑した。
「俺もそう思ってた。
けど、レンは政府がここを消すまでの時間稼ぎがしたいって言ったんだ。」
「時間稼ぎ…?」
燭台切は不思議そうに返した。
「みんなで逃げられる場所を確保するんだって。」
「みんなで…。」
燭台切は少し見開いた後、困ったように笑った。
「レンちゃんらしいね。」
一人で逃げることも出来るだろうに。
寧ろ、その方がずっと簡単な筈なのに。
レンは自分達を全て掬い上げる選択をする。
「けど、よくすんなり出したね。」
大和守は不思議だった。
あれ程貸すことを渋っていたのに、と。
レンの条件は身の危険が起きてから、だった筈。
結果的にレンに転移装置を渡したことは正解だったが、加州が納得していることが腑に落ちない。
加州は不思議そうに自分を見る大和守に少し笑うと、懐からレンより預かった額当てを取り出した。
「これって、レンちゃんの…。」
燭台切、鶴丸、大倶利伽羅は瞠目する。
以前、レンの持ち物を取り上げていた際に、武器と一緒に見たことがある。
「これはレンの兄弟の形見、なんだって。レンは、この世でもっとも大切な物だから、必ず取りに戻るって言って現代に渡ったんだ。」
「それでかぁ…。」
大和守は漸く腑に落ちた。
確かにそんな大切な物を預けられたら納得出来る。
ましてやレンは、あまり物には拘らない上、興味も示さない。
そんな執着心のないレンが唯一執着する、大切にする物。
「役得だったね。」
大和守は少しの僻みを乗せて加州に言った。
加州は困ったように大和守から視線をずらして頬を掻く。