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君に届くまで

第50章 主、幽閉



「これはこれは、皆様お揃いのようで。どうかされましたか?」

「審神者を迎えに来た。レンはどこだ?」

鶴丸は、江藤を冷たく見据えながら問う。

「大変失礼致しました。審神者様は早速今夜からこちらにお泊まりになるようです。ご連絡せずに申し訳ありません。」

そう言って、綺麗に礼を取る。

「…何故、本人が自ら連絡して来ないんだ?」

鶴丸は目元に険を乗せ、怒りを滲ませて静かに問うた。
すると、江藤はすっと笑みを消す。

「…元々、審神者と付喪神の間には厳然たる敷居が御座います。今までが可笑しかったのですよ。
審神者様は本日からこちらにお住まいを移されます。今後はお呼びがかかるまで待機をお願い致します。広間でお待ちくださいませ。」

その言葉を受けて、彼等は忽ち殺気立つ。

「…ふざけたことを。そもそも、お前達が…」

鶴丸は怒りに任せて江藤に言い募ろうと身を乗り出した時、誰かに肩を掴まれた。

「審神者がそう言ったの?」

加州だった。
彼は強い力で鶴丸の肩を掴んでいる。

鶴丸はどういうつもりだ、と加州を睨め付けるが、彼は鶴丸を見ようとはしない。
江藤だけを真っ直ぐに見据えていた。

「そうですよ。わたくしの言葉は審神者様のご意向です。」

江藤は、皮肉気に少し笑いながら加州を見下すように見遣る。

「…そう。なら俺達は広間で待機するよ。」

「加州!お前何を…」
「帰るよ。」

加州は強い視線で鶴丸を見て、言葉を遮った。
その瞳には、絶望も怒りも悲しみもない。
鶴丸は彼に違和感を感じる。

加州は、そのまま向きを変えると広間へと戻って行く。何となく事情を掴んでいた大和守は彼に続いた。
ふと、皆が続かないことに気がついた大和守は彼等に向き直り、手招きをする。

「みんな〜。戻ろうよ〜。」

鶴丸は、呆気に取られたまま加州を目で追っていた。
しかし大和守から促され、ハッと我に返ると、江藤を一度ギッと睨み付けてから後を追う。

他の面々も、後ろ髪を引かれる思いでちらりと家を振り見上げると、鶴丸に続いてその場を後にした。
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