第50章 主、幽閉
「地下は今流行りなのですよ。シアターにしても良し。収納にしても良し。使い方が自由で重宝されております。気温差が緩やかですので、夏は涼しく冬は暖かいので、大変過ごしやすくなっております。」
セールスの如く美辞麗句を並べられても、レンには幽閉に使う所しか思い浮かべられない。
「わかりましたので、次へ案内してくれませんか?」
レンは先を促すが、江藤は動かない。
「わたくしの一推しですので、是非ともご覧くださいませ。きっとお気に召すかと存じます。」
レンは断る理由も思いつかないので、渋々江藤の誘いに乗る。
彼はドアを大きく開けて先に行くよう促し、レンは警戒しながらも従う。
「少し暗くなっておりますので足元にお気をつけ下さい。」
そう言い終わるか終わらないかの時に、ビリビリビリビリという音と共にレンの全身に電撃が走る。
「……!」
レンは気こそ失うことはなかったが、意識は朦朧とし、体は痺れて思うようには動かない。
「さすが、と言うべきでしょうか。かなり強く設定したんですがね。」
そう言って江藤はスタンガンの出力を確かめる。
「…やっぱり…。」
レンは動かない体を投げ出したまま、階段の壁に身を預ける。
「わかっていたのなら話は早い。あなたには生涯地下で暮らしてもらう。」
江藤がそう言い放つと、どこに潜んでいたのか、屈強な男が2人現れて無言でレンを地下へと運びだす。
レンは抵抗出来ずにされるがままだ。
江藤は、レンが地下の床に転がされるのを冷めた目で見届け、そのまま地下を出て行く。
ガチャリという音を最後に辺りは真っ暗になる。
目を開けても閉じても変わらない程、真っ暗だ。自分の手も足も見えない。
レンは動けないこともあり、そのまま混濁する意識を手放した。