第49章 危機回避
レンは加州を背負って、再び下へ降りる。
「何か見つかった?」
大和守が問いかける。
「いえ、特に何もありませんでした。」
「ほらぁ。屋根裏なんて目新しい物何も無いって。」
乱が笑いながら言う。
「ちゃんと閉めてきたか?」
薬研が少し笑いながら問いかける。
「はい。しっかり閉めてきましたよ。聞きたいんですが、あそこの押し入れってみんな使えるんですか?」
「どういうことだ?」
薬研が聞き返す。
「位置が高すぎて使えないんじゃかいかと思いまして。使い道あります?」
「そう言われると、無いな。使おうとも思わなかったしな。
たぶん、天井裏に続く入り口を確保するためだけのものなんじゃないか?」
レンはそれを聞くと、呆れたような顔をして目を数回瞬かせる。
「…無駄ですね。なんちゅう贅沢な。」
「ま、政府のやる事だからな。」
薬研は肩を竦める。
加州はレンから少し離れて、何とはなしに彼女を見ていた。
薬研達と談笑するレンは、どうやら影分身であることを言うつもりがないらしい。
もしも、今それを言ったらどうなるのか。
加州は想像してみる。
外にはどこに潜んでいるやもしれない小型機があって、その中で影分身であることを話したら。
先ず乱が驚いて声を上げるだろう。
大和守も勝手をしたレンに抗議するだろう。
今日の内にみんなに知れ渡る。
そんな中に江藤が訪れたら?
皆は嘘を上手くつけるだろうか。
小型機がその様子を見て聞いていたら?
レンを捜索されるかもしれない。
或いは、レンをそのまま閉め出すかもしれない。
どちらにしても、おそらくレンはもう戻っては来れない。
そんなリスクを冒してまで、今伝える必要があるだろうか、と考えてしまう。
けれど、心情としてはやっぱり皆にも知っていてもらいたいとは思う。
「う〜ん…。すごいジレンマ…。」
加州はぼーっとしながら、暫し彼等を見ていた。