第49章 危機回避
「…加州さん。私は現代に行ってみんなで逃げられる場所を探してこようと思っています。」
加州は顔をゆるゆると上げる。
レンは加州としっかり目を合わせると、彼の手を握る。
「私に時間をください。」
「…時間?」
「はい。勿論、政府が宣言通りに私に家をくれると言うのなら、危害を加えないのなら、数日で帰ってきます。
もし、そうでないならば。
3ヶ月時間をください。その間に逃亡先を確保します。」
「どうやってそれがわかるの?」
「影分身を使います。影分身は消えると本体に情報が全て伝わりますから。
向こうにどれ位いられるのかわかりませんが、命の危険を感じたら一度ひっそり戻ります。」
「命の危険?」
加州は何のことかわからず、首を傾げる。
「私は、本丸と魂が繋がってるから離れられないと聞きました。」
レンは服の中から額当てを引っ張り出すと、それを加州に持たせる。
「何これ…?」
「兄弟の形見です。これは私がこの世で最も大切にしている物ですから、必ず取りに戻ります。
だからそれまで加州さんが持っていてください。」
加州は驚き瞠目する。
次いで、ふっと肩の力が抜けた。
「…わかった。レンを待ってるよ。」
レンは黙って頷くと、握っていた手を離して印を組む。
「影分身の術。」
ボンとレンがもう一人現れた。
「約束。絶対3ヶ月で戻って来て。」
「約束します。」
そう言って、レンは簡易転移装置を発動させると、光に包まれて消えてしまった。