第49章 危機回避
レンは加州を背負うと素早く登り、押し入れの中に入る。
「何の為にこんな高さに作ったんでしょうね。使いづらいでしょうに。」
「さぁね。なんせ作ったのは政府だからね。」
加州はレンから下り、四つん這いで真ん中までくると、天井の木板を順々に押して開けられる所を探す。
3枚目の板を確かめた所で、ガコンと音を立てて外側に外れる。
そのままゆっくりと押し開くと、真っ暗な屋根裏が現れた。
「代わります。」
レンはそう言うと、躊躇いなく頭を突っ込んだ。
そしてぐるりと1周回ってみるが、小型機特有の音は無いようだ。
次いでするりと屋根裏に上がると印を組む。
「氷遁、氷華縛。」
ピシピシという音と共に広範囲の足元が氷で覆われる。
「氷遁、硬石雹結界陣。」
足元から不透明な氷が迫り上がり、レンの周囲を半円状に包み込む。
「かまくらみたい…。」
加州は口布を外し、呟きながらレンに続いて中に入る。
「…加州さん、お願いがあります。」
レンは神妙な面持ちで上がって来た加州に告げる。
加州は軽くため息をつくと、着物の内側しまってある簡易転移装置を取り出した。
「…これ?」
「はい。貸してください。」
やっぱりな、と思いつつ、首にかけてある鎖を外すとレンに渡す。
「まだ、身の危険は起きてないよ。」
「そうですね。」
レンは加州から簡易転移装置を受け取ると、鎖を首にかける。
「けれど、身の危険が起きた時には既に手遅れだと思います。」
レンは加州を真っ直ぐに見る。