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君に届くまで

第49章 危機回避


少しだけ押し入れの襖を開けると、中は確かに埃だらけだった。しかも、真綿のようにふかふかに積もっている。

「う…わ…。」

何十年掃除してないのだろうと思うような積もり方だ。
レンは、意を決してガラリと襖を全開にする。
すると、灰煙が立つかのように埃が舞い上がり、中から溢れてくる。
レンはさっと腕で鼻と口を覆うと、目を眇めて中を窺い見た。
見える範囲には小型機は潜んでいないようだ。

「持ってきたよ。」

声がかかり下を見ると、手に濡れ雑巾とバケツを持ち、口布をした加州が立っていた。
レンは、天井からストンと降りて彼に近づく。

「はい、これ。レンの分の口布。」

そう言って加州は綺麗な布を差し出した。

「ありがとうございます。」

レンは口布を付けると、加州から雑巾を受け取る。
そして近くの柱を伝って天井に登ると、開け放った押し入れの中に迷わず入る。
大きく雑巾を広げると取れる限りの綿埃をざっとかき集めて纏め、天井から柱を伝って下に降りる。

「…今度は真っ白けだね。」

加州が上を見上げると、レンが通った足跡が天井、柱と点々と白く残っている。

「そうですね。何せ埃が雪のように積もっていましたから。」

「そうだろうね。そんな所に入ろうと思う人は誰もいなかったから。」

すると、レンは少し仰け反り、

「はっくしょん!!」

盛大にくしゃみをする。彼女の周りには、もわもわと白い埃が立ち、陽の光に反射してきらきらと光る。

「ちょっ…!埃が舞う!」

「すみません。我慢できませんでした。外で少し叩いてきます。」

そう言うと、庭先に降りてぶるぶるぶると体全体を振りたくって埃を落とす。
その姿はどう見ても、

「…犬かっつーの。」

大型犬の胴震いのようだった。
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