第49章 危機回避
「おかえり。工事は進んでいたかい?」
燭台切がおにぎりを配りながらレンに問いかける。
「あと少しで完成だと思います。もう動いてもいい頃ですね。」
「動く?」
「何か仕掛けてくるならそろそろってことですよ。」
レンは何でもないことのように言うが、そんなことあっては困る。
燭台切は思わず眉を顰める。
「…本当に仕掛けてくるのかい?」
「何とも言えません。
けど、私の為に建てると言っておきながら私は一度も中へは招かれていませんし。進捗の報告も工事初日の一度きりですし。
申し訳ないことをしたと言っている割には、監視したり軟禁したり。
やってることがあべこべ過ぎて。
私の為だ、ってことがそもそも怪しかったりして。」
レンはおにぎりを頬張りながら、淡々と自身の見解を述べる。
燭台切は小さくため息をついた。
確かに聞けば聞くほど、怪しいという思いしか湧いてこない。
どうにか何事もなく過ぎることを祈るしかない。
お昼を食べ終わり、レンはごろんと広間に寝転がる。広間の天井は普通の家屋よりも高く作られていて、木板の並びが一気に視界に入る。
木目は綺麗に揃えられていて、整然と並んでいる。
ふと、隙間があるのか、無いのかが気になり始めた。
レンは起き上がると、近くの柱に足をかけ垂直に立ち、天井目指して登る。
お昼後ということもあり、広間は誰もいなくなっていた。
レンは天井に逆さまにしゃがむと、木板と木板の間を指でなぞる。
目視で確認しても、虫一匹通る隙間は無い。
ならば角はどうだろう、とレンは辺りに歩いていく。
天井と壁の隙間にはゴム材が敷かれていて、ここもまた虫一匹通る隙間は無い。
レンは同様に他も見て回る。