第48章 魂縛りの呪
「厚藤四郎、こちらへ来い。」
呼ばれた厚は、顔を強張らせながらレンの指示通り彼女の前に立つ。
「薬研を見ていましたよね?抵抗してくださいね。」
いきます、と一声かけるとレンを纏う空気が少し重くなる。
「厚藤四郎、座れ。」
「くっ…!」
厚もまた、レンの指示に必死で抵抗する。
そして、一度レンをキッと睨みつけてからぐっと力を入れると見えない糸から逃れたかのように自由に動き出した。
「断ち切ったぞ!」
「よし、いい具合ですね。」
そう言うとレンはにんまりと笑う。
「”本気で”抵抗してくださいね。」
その言葉と顔に薬研と厚の中に嫌な予感が走る。
レンは一度大きく息を吸って吐き出すと、言の葉に本気の意思を込める。
「薬研藤四郎、厚藤四郎。抱き合ってキスをしろ。」
その命令に2人は顔を青褪めさせて向かい合った。体の自由は利かず、命令通りに動いてしまう。
抱き合うまではいいとしても、キスだけは何としてでも避けなければ。
2人はぶるぶると震えながら必死で互いから離れようともがく。
しかし、一歩二歩と確実に近づいてしまう。
「くそ…!」
2人が触れ合う距離まで近くと、厚が目をぎゅっと瞑りながらも更にもがく。
薬研もなんとか厚と自分とを引き離そうと、厚の服をぎゅっと掴む。
しかし、抵抗虚しく2人は抱き合ってしまった。
レンは命令を取り下げることはない。それどころか心なしか楽しそうに見える。
2人は震えながらも命令通りに顔を近づけると、触れるだけのキスをする。
そこで体の自由が戻ってきた。
2人は膝から崩れると互いに背を向ける。
「「おえー。」」
兄弟で、しかも男同士でキスとか…。
苦すぎる…。