第47章 政府の企み
レンは、仕留めた虫を落とさないように手で受け皿を作り、無言で広間に続く道を歩いていく。
「レン、…」
鶴丸はやけに静かな様子を訝しみ、レンに話しかける。
だが、レンは言葉を遮るように、人差し指を口元に立てて静かにするよう合図を出した。
鶴丸は少し面食らいながらも、レンの指示に黙って従う。
レンは広間に着くと、クナイホルダーを取り出し、行燈を用意する。
「火をつけてもらえますか?」
「わかった。」
燭台切が火打ち石を用意し、鶴丸が行燈の木枠を外す。
薬研が火種になる綿を用意し、その上で燭台切がカンカンと石を打つ。
火種を行燈に移して、木枠を閉じるとふんわりと辺りが明るく照らされる。
レンは、手元を行燈に近づける。
取り出した細い千本を使って氷千本から外した蜘蛛の残骸をなるべく崩さないように胴体と足の間に差し込み、慎重にこじ開ける。
カシャンと小さく音を立てながら甲殻が外れると、電子部品が所狭しと並んでいる。
特に真ん中に鎮座する割れた丸い部品はレンズに見える。となれば、カメラで間違いないだろう。
その横にある黒い箱型の部品を摘み上げると、その部品はまだ蜘蛛に繋がっている。
「何だ、これ?」
厚が尋ねるも、レンは首を振るだけで一言も発しない。
彼女はクナイを取り出し、繋がっている線をさっと切ると、僅かに火花が飛んだ。
レンはそれを表に裏に、矯めつ眇めつ眺めた後、クナイで一突きして、壊してしまう。
「たぶん集音機の類ですね。」
「盗聴機、かな。」
燭台切は、渋い顔で壊れた黒い部品を摘む。