第47章 政府の企み
「これを見つけました。」
「何これ?」
「何でしょう?」
レンは近寄ってきた加州に氷千本ごと渡して見せた。
厚と五虎退は首を傾げながら氷千本の切っ先を見る。
「虫…?」
「それにしては色がおかしくない?」
「銀色の蜘蛛なんて見たことないぞ。」
加州、乱、薬研は氷千本を代わる代わる持ち、その物体をしげしげと見る。
「しかもそれ、感触が金属なんです。」
レンがそれを眺めている面々に向かって言うと、彼等はそれぞれ蜘蛛の残骸を触り出す。
「…ほんとだ。金属だ、これ。」
「機械なのか…?」
燭台切、大倶利伽羅は、俄には信じられないと言った風に蜘蛛に触れては、困惑を浮かべる。
「何の為に…。」
小夜の言葉にレンは淡々と答える。
「見張られてるんだと思います。」
レンの言葉に彼等の顔が少し強張る。
「…これ一匹だけか?」
鶴丸はすっと目元を冷たくして、レンに尋ねる。
「そこにいたのは、これ一匹だけでした。」
レンはそう言って少し溜め息をつく。
「けど、これ一匹だけだとは思えません。こんな小さくて精巧な物だったら、少なくても数匹は放たれていたとしても不思議はないです。」
「厄介だな…。」
薬研は難しい顔をしながら腕を組む。
「取り敢えず、一旦戻りましょう。ここにいても無意味です。」
「そうだな、一旦戻った方がいい。」
鶴丸をはじめ、他の面々も賛同する。
彼等が去った後、カサカサと小さな音を立てながら一匹の蜘蛛が顔を出した。
甲殻に覆われたすぐ下には豆粒大のレンズが、帳の降りた空を映し出す。
そのレンズの向こうで、彼等の会話を見聞きしていた者はニヤリと笑う。
「ご名答…。」
江藤は、モニターに映し出された映像を満足気に見る。そこには4つの内1つがブラックアウトしていた。