第47章 政府の企み
「お初にお目にかかります。わたくしは、政府の名代として派遣されました江藤と申します。」
そう言って男は、にこにこと愛想のいい笑顔を浮かべながら名刺を差し出し、レンは警戒しながらもそれを受け取る。
「この度は、審神者様には大変申し訳のないことを致しました。
政府としては、審神者様の新居を建設させていただくことで、お詫びの印とさせて頂こうと考えております。」
「勝手に焼き払っといてよく言うよね。」
「しかも審神者の棟だけ?勝手すぎない?」
「申し訳ございません。私も殆ど事情を聞かされてないものですから。
1棟だけなのは、予算の都合上、これが限界の為だと伺っております。」
江藤は困ったような顔をして頭を下げているが、それが声音には反映されていない。そこが何とも態とらしくて胡散臭い。
「何故、審神者の棟なんですか?
それよりも直してほしい所が沢山あるのですが。」
レンは控えめに言ってみる。
「わたくしは何分名代でして。そういった変更のお取り次ぎは出来かねます。仮に出来たとしても決定通知として出された指令ですので、おそらくは変更できないかと存じます。」
にこにことした笑顔を崩さないまま、決定通知だとバッサリ切り捨てられたレンは、
「…そうですか。好きにしてください。」
と言うより他は無い。
「では、精一杯務めさせて頂きます。」
江藤はそう言って、頭を深く下げて礼を取ると、持っていた鞄からファイルを引っ張り出して、その中に挟んであった紙を差し出す。
「こちらが、建設の日程表になります。
工程は、およそ1ヶ月程を予定しております。」
「まさか、昼夜問わず工事するわけではありませんよね?」
レンの質問に、とんでもない、と江藤は首を横に振る。
「工事の時間は朝9時から、夕方の5時までとなります。
それ以外の時間は、工事の者は一度下がらせて頂きます。」
「…わかりました。」
「では早速、取り掛からせて頂きます。」
そう言って挨拶を済ますと、ノートパソコンを取り出して何処かへ連絡し始めた。