第47章 政府の企み
時は少し遡りーー
レンは、広間で大和守と話をしていた加州に話しかける。
その顔は、何時になく神妙な面持ちだ。
「加州さん、折り入って相談があるのですが。」
それを聞いて加州は少し驚いた。
レンが俺を頼ってくれるなんて、と少し感動する。
「何?相談って。」
加州は少し笑いながらレンに向き直る。
折角相談してくれたのだから、精一杯応えなきゃ。
レンも少しも居住まいを直して口を開いた。
「簡易転移装置を貸してください。」
「ダメに決まってるでしょ。」
彼女は何の前置きもなく結論だけを言い、加州は間髪入れずに答える。
そもそも、それは相談と言えるのだろうか。
ー何かと思えば…。喜んで損した気分だ。
加州は、頭が痛いとばかりに手で額を抑える。
「レンに渡すと、いつの間にかどっか行っちゃいそうだからやだよ。」
隣で聞いていた大和守も加州の味方をする。
加州と大和守の中では、先日の国会議事堂での衝撃がまだ尾を引いていた。
レンには、目に見える所にいて貰わなければ落ち着かないのだ。
だが、彼女にも彼女の言い分がある。
「食糧庫がすっからかんなんですよ。このままではいつか底をつきます。」
「いや、つかないから。その度に俺等が買い出し行ってるじゃん。」
「…節子さんの金子って数に限りがありますよね。」
レンは燭台切を手伝っている最中、食糧庫を見る機会があり、危機感を覚えたのだ。
『やっぱりこれだけの人数がいるとすぐ無くなっちゃうよね。』
燭台切の言葉が脳裏に呼び起こされる。
加州達が前回買い出しに行ってから1週間しか経っていないのにも関わらず、倉庫の中は物がぽつりぽつりと置いてあるだけで、がらんとしている。
早急に安定した給金を貰えるところを探さなければ。
近い将来、飢え死にする。