第46章 新たな主
レンはふと、疑問に思ったことが口をついて出た。
「神様の体って…どうなってるの…?」
「え?体?どうなってるって、どういうこと?」
隣に座っていた、大和守がレンの小さな呟きを拾う。
「あー…、いや。…例えば…排泄物とか。」
そう言った瞬間、彼等は一斉に咽せた。
「大将。食事中だぞ。」
左隣に座っていた薬研は思わずレンを睨め付ける。
「じゃあ、心臓とか内臓とか。」
レンは懲りることなく、例えを追加する。
「…普通、そっちを先に出さないか?」
鶴丸は、頭が痛いと言わんばかりに額に手を当てる。
ーこいつに女という自覚を持たせてやりたい…。
「まぁ、性よ」
「藪蛇だから。」
燭台切の隣にいた太鼓鐘が、素早く手で口を塞がれる。
“性欲うんぬんを聞かれるよりマシだ”と言おうとしたところで遮られたのだ。
これは、ファインプレーと言うべきではないだろうか。
「心臓はあるよ。たぶん、内臓も人間と一緒。ほら。」
大和守はレンの右手を持ち、自身の心臓に押し当てる。
どくん、どくん、どくん。
規則正しく動く振動が手を通して伝わってくる。体温も人間のそれと変わらない。
生きている。
その表現が正しくふさわしい。
何となく、レンは嬉しくなる。
この命達を守り切った達成感と充足感。
失うばかりではない今に確かな希望を感じていた。
レンの顔を見て思うところがあったのだろう。
大和守は、それはそれは嬉しそうに笑った。
「レン、後で俺も触らせてあげる!」
大和守の隣でことの成り行きを見ていた加州が名乗りを挙げた。
「俺も!」
「ボクも!」
「俺が先!」
とまた舌戦が勃発するのは、ご愛嬌というやつだ。