第46章 新たな主
「ありがとう、それも全部表に出しちゃって。」
僕はみんなに手伝ってもらいながら、黒くなった厨の焦げをヘラで大雑把に落としていく。
「竈門で正解だったな。まだ使えそうだぞ、これ。」
鶴さんは、額の汗を作業着の袖で拭いながら一度立ち上がる。
「やっぱり、昔ながらの方が丈夫だよね。」
「おい、光忠。倉庫の方はどうする?」
伽羅ちゃんが倉庫から顔を出した。
「初代のお札のお陰で被害が少なかったからね。そこはまた今度でいいよ。」
初代は…節子さんはこれを見通していたのだろうか。
倉庫には、ずっと前から四隅に火除のまじない札が貼られている。先日の焼き討ちでも僅かに燃えただけで、被害という被害は殆ど無かったのだ。
お陰で倉庫には、全員で食べても10日は食い繋げるだろう食料がぎっしり保存されている。
「お〜い。薪になりそうな物持ってきたぞ〜。」
戸口を見ると、貞ちゃんと鳴狐君が両手に零れ落ちそうなくらい運んできてくれた。
「ありがとう。そこに積んでおいてくれるかい。」
薪も随分集まった。
僕は少し使いづらくなってしまった厨を見渡す。
レンちゃんが起きたら具沢山のお粥でも作ってあげよう。
また、美味しそうに食べてほしい。
ふと、ぽんぽんと肩を叩かれた。見ると鶴さんが穏やかに微笑んでいる。
「よし、もうひと頑張りしますか。」
うん、と一言返すと、僕はまた作業を始めた。