第46章 新たな主
鶴丸はほっと息をつくと、改めて手元の柄を確かめる。
黒地に金糸で柄巻が施されているそれには、薄ら手形が残っている。
中途半端に破損しており、鍔の部分は無くなっていた。
反対側の柄頭を見てみると、薄ら何かが書かれている。
それを見て、鶴丸の目に薄ら涙の膜が張る。
「お前、こんな所にいたのか…。」
昔、昼寝をしている三日月の刀を拝借して、柄頭に落書きをしたことがあった。その跡が残っていたのだ。
「鶴の旦那!?大丈夫か!?」
先程の音で駆けつけた薬研が慌てて鶴丸に駆け寄る。
「あぁ、俺は何ともないさ。大丈夫だ。」
鶴丸は目元の涙を拭って立ち上がる。
「…それは?」
「三日月の柄だ。どうやら俺はこいつに呼ばれたらしい。」
薬研は、切れ端と言えど刀が残っていたことに驚いた。
「さて、心配かけたな。作業に戻るか。」
鶴丸は朗らかに笑って、薬研を促した。