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君に届くまで

第46章 新たな主



「ここは…。」

三代目審神者の住まいだった所だっただろうか。
三日月の最期が脳裏を過ぎる。

「……!」

身の内に鎌首もたげる憎悪の感情を抑え込む為、一度大きく深呼吸をして精神を落ち着かせる。
次いで目を閉じてから感覚を研ぎ澄まし、ゆっくり目を開けた。

ーこの中から気になる何かを感じる。

鶴丸は感じるがまま、崩れ落ちた門へと入っていく。
玄関である引き戸は開かず、持っていた木槌で叩き壊した。
ドスン!と内側に倒れた戸がぶわりと灰埃を巻き上げる。

鶴丸は、不安定になった足元に気をつけながら気になる方へ向っていく。
玄関を上がってすぐに左へ曲がる。奥側に位置する窓辺の部屋。
三代目審神者は好んでよくその部屋を使っていた。

ゴロゴロ、ガタン!と後ろで音がして急いで振り返ると、玄関先に2階の天井が落ちた所だった。

のんびりはしていられない。

鶴丸は迷うことなく奥の間に向かう。
早い所、気になる何かを突き止めて出なければ。

襖を蹴破り中へと入る。
この中に気になる何かがある筈だ。

鶴丸はぐるりと部屋を見渡す。
三代目が使っていた肘掛けのような物の後ろ、床の間。

「…何かある。」

鶴丸はツカツカと歩を進め、肘掛を蹴っ払うと床の間に折り重なって山積みになっている黒い塊を少しずつ取り除く。

塊をどかしていく内に少しずつ燃え残りが現れ、女物の服が出てくる。それらを全て取り除くと、煤で汚れた刀の柄が現れた。

鶴丸はそれを手に取り、驚きに目を瞠る。

「これは…。」

その時、地鳴りのような音が家屋全体を揺るがす。
身の危険を感じた鶴丸は、急いで近くの窓を蹴破って外へと転がり出た。
同時に背後の家屋は雪崩のように崩れ、跡形もなく瓦礫の山と化す。

「危なかった…。」

もう少し遅かったらあの瓦礫の山の下敷きになっていた所だった。
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