第6章 帰り道を探して
レンは時間が許す限り、北方を探索する。
北に行くほど、川が急流になっていることから、ここら辺は上流になるのだろう。河原の石もだんだんと大きなものが増えている。
湧水を見かける事も多くなった。一口掬って飲んでみると、冷たくて甘い。自然が豊かな証拠だ。
レンは近くの岩場に腰を下ろすと、少し遅い昼食を食べる。ただの塩結びだが、空腹にはもってこいのおいしさだ。
レンはぺろりと食べ切ると、また探索を始める。
日は西に傾き、もうすぐ空の色が変わるだろう。
「ここまで、かな。」
レンは呟くと本丸へと戻っていった。
レンは数日かけて、東西南北を探してみるも、何の痕跡も見つけることが出来ないでいた。
東側は潮の流れの速い海があるだけ。
西側はひたすら森と草原があるだけ。
南北には河が走っており、それは西側へと続いていた。いずれも上流になる。つまりは南北に高い山々に挟まれていることになる。
これ以上の探索はもう、レン1人では限界だった。
海を渡る手段も無ければ、森を抜ける手立てもない。
まさに八方塞がりだ。
またその先に行けたとしても、おそらくは何の手がかりも見つけられないだろう。
探索途中の手近な浜辺にごろんと寝転んでレンは暫く空を眺める。
今日は雲が多い。明日は雨だろうか。
レンこの地に来た事を段々と後悔し始めていた。
この何もない地で、無為に時間だけが過ぎていく今が、ただただ口惜しい。
やはり、あの時空間忍術は使うべきではなかったのだろうか。しかし、追い詰められたあの状態で、使わないという選択肢はレンにはなかった。
だが、ただ安穏と暮らす今に納得できるかと言えば、否だ。
この命は須く役立つ事に使われるべきであり、決して寝かせる為にあるのではない。
きっとかつての友ならその様に行動しただろう。
ー今の私を見たらリヨクはなんて言うだろうか。
失望、するだろうか…。
レンは1人途方に暮れた。