第6章 帰り道を探して
燭台切が中に戻ると鶴丸が寝間着から内服に着替えているところだった。
「やあ、鶴さん。おはよう。」
「おう、おはようさん。あの子はもう出かけたかい?」
「今行ったよ。」
燭台切はレンを思い浮かべて穏やかに笑う。
それを見て、鶴丸はざわりと気持ちが波立った。
「…なあ、光坊。少しあの子に肩入れしすぎてやしないか?」
期待すればする程、裏切られた時の傷は大きいものだ。
初代審神者を懐かしんでは現実に打ちのめされ、堕ちていった刀剣は何人もいた。
親しかった蒼い三日月が過ぎる。
仲間にはあんな風になってほしくはないものだ。
「そう、かな?そんなに肩入れしてるつもりはないんだけど。」
燭台切は内心どきりとした。思い当たる節はある。
「…肩入れしたところで、ロクなことにならない。光坊だって知ってるだろう?人間は期待するだけ無駄だ。」
「…そうだね、よく知ってる。」
燭台切は自嘲気味に笑う。
彼だって初代審神者の代から顕現している。
それだけ色々な人たちが堕ちていったのを見てきたのだ。
「ところで伽羅ちゃんは?」
部屋を見回すと大倶利伽羅の布団は片付けられていて、彼の姿はどこにも無い。
「さぁなぁ。散策でもしてるんじゃないか?」
最初の地点に着いたレンは影分身を出し、早速周辺の草刈りを始めた。
時間を忘れて黙々と草を刈るその集団は、側から見ると何とも言えず不気味なものだ。
日が中天に差しかかった頃、すっかりキレイに刈られた大きな円盤が現れた。
しかし、やはり術式の様なものは見当たらない。
「ここまでして、手がかりがないとなると…
今度は周辺を探すしかないか…。」
レンはがっくりと肩を落とした。