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君に届くまで

第46章 新たな主



『鶴…、鶴…。』

誰かに呼ばれた気がした。

パチリと目を開けると、湯呑みを握った手元が目に映る。
いつの間にか寝ていたらしい。
鶴丸は両手を上に挙げ、体を伸ばす。

丁度その時、燭台切達が道具を手に戻ってきた。

「交代だよ。」

「あれ、もうそんな時間?」

「滋養にいい実を摘んできといたぜ。休憩がてら食べてくれ。」

乱、大和守、薬研がそれぞれ話している。



「鶴さん寝てた?」

燭台切が鶴丸のそばに来て話しかけた。

「なんでだ?」

何でわかったのか、と鶴丸は驚く。

「目がとろんとしてるよ。まだ頭が働いてないみたいな。」

燭台切がそう言って少し笑う。

「あぁ、そういうことか…。いつの間にか寝ちまったみたいだな。」

鶴丸はバツが悪そうに後ろ頭を掻いた。

「もう少し休むかい?」

「いや、俺も出るさ。」

鶴丸は立ち上がると、燭台切から道具を貰い受ける。

「…無理しないようにね。」

燭台切は苦笑する。
鶴丸は昼寝をすると寝起きが悪くなる。目覚めてから暫くぼーっとしてしまうのだ。

「大丈夫さ。今日はすんなり目が覚めた。直ぐに動けるぜ。」

そう言って、後ろ手に手を振る。










「さて、どこから手をつけますかね。」

辺りを見回すと、隣の2棟は大方片付いたらしい。
廃材が大雑把に大きさ毎に纏められている。

手近な棟から片付けようと手をつけた時、ふと呼ばれた気がして鶴丸は顔を上げた。
不思議に思って辺りを見回すも、変わった様子は見受けられない。

けれど、どうにも向こう側が気になる。
広間から離れた中央部。

鶴丸は声なき声に手を引かれるように、気になる方へと足を向ける。
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