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君に届くまで

第46章 新たな主



「…誰か来ます。」

「ここを訪れる者などいない筈ですが…。」

「けど、気配が近づいてきますよ。禍々しい感じがします…。」

主様は注意深くドアの方を見ておりました。

「もしかしたら…。」

言いかけてから主様は顔を強張らせてしまいました。

「こんのすけ、さっきの補助具を持てるだけ持ってください。ここから燭台切の所まで時空間移動できますか?」

「…はい。出来ますが…。」

「いつでも術を発動できるよう準備しておいてください。そして隠れてください。」

そう言うと主様はクナイを抜きました。
わたくしが急いで隠れるのと同時に、本当に誰かが入ってきたのです。

「…てっきり、あなたは向こうに行くと思っていたんですけどね。」

「前田に止められたんだ。でも残って正解だったよ。」

声でわかりました。鴉だったんです。
わたくしは血の気が引くのを感じました。
よりによって、一番会いたくない人に会ってしまったのですから。

「この前はよくもやってくれたね。お礼はたっぷり返すよ。」

刀が抜かれる音がしました。

「いりませんよ、そんなもの。のし付けて返します。」

主様も黙っていれば宜しいのに、態々煽ってしまわれたのです。
それを合図に戦闘が始まってしまいました。

わたくしは出るに出られず、なるべく音を立てないように補助具をかき集めると、死角に入り込んで潜んでいました。
ちらと見えた限り、互角のように思えました。
一進一退の攻防に冷や汗が止まりませんでした。

しかし、ある瞬間。主様の動きが鈍ってしまわれたのです。
その隙を突かれて負傷してしまわれました。

「遂に捉えた…!散々手こずらせて…、…!!」

途端に優勢の筈の鴉が、怯えているように見えました。

主様は自身に刀が刺さったにも関わらず、そのまま鴉の懐に飛び込むと、鴉の手首と首を同時に掴みました。
すると、鴉は呆気なく崩れ落ち、立てなくなってしまったのです。

「こんのすけ!急いで燭台切の所まで飛ばしてください!」

わたくしは訳を聞く暇もなく、慌てて燭台切殿を目掛けて飛びました。
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