第46章 新たな主
わたくし達は急いで儀式の間に駆け込みました。
補助具を幾つか頂戴して準備をしているうちに、不意に疑問に思いました。
「何故、審神者に立とうと思ったのですか?帰れないのは困るとおっしゃっておいででしたのに。」
「…迷っていましたよ。契りを交わすリスクは私にとってはあまりに大きい。
実を言えば、今も迷いや抵抗はあります。
私は友の遺言を守りたい、友が出来なかったこと代わりにしたい、と。
その為には里に帰ることは急務です。」
「ならば…、何故?」
「帰り道が見つからないんですよ。探しても探しても糸口すら見つからない。正直、途方に暮れていました。
そんな時に五虎退から手入れを頼まれたんです。
その後は次々に手入れを頼まれて。
そしたら政府に感づかれた。
今思えば、私には放っておく、という選択肢があったんですよ。
けど、その選択肢が思いつかなかった。
彼等を助けることは当然の選択だったんです。
今回も傍観という選択肢があったんです。
けど、私は自ら首を突っ込んだ。
これが彼等の助けになると思うから。」
そう言ってから、レン様は少し寂しげなお顔を見せられました。
「…友には恨まれるかもしれません。
けれど、彼等と言葉を交わし、共に暮らしていくうちに、私は彼等を見殺しにしてまで里に帰りたいとは思えなくなりました。
これが私の正直な気持ちです。」
そう言って穏やかに微笑まれました。驚きました。
わたくしは主様の笑った顔を見るのは初めてでした。
「…本当に宜しいのですか?」
「もし帰り道が見つかったら、その時考えることにします。だから、今は私が出来ることをやりたいんです。」
「承知いたしました。こちらこそ宜しくお願いいたします。」
こうして主様とわたくしは契りを交わし、晴れてレン様は審神者となりました。
しかし、問題が起きました。