第46章 新たな主
翌日、国会議事堂で正面玄関を破り、皆様が中に散っていった後のことで御座います。
主様は、わたくしを連れてもう一度外へ出ると、ご自身と瓜二つの人を生み出し、更にはわたくしそっくりの管狐を生み出しました。
驚きすぎて声も出ませんでした。
ドッペルゲンガーを見ているようで生きた心地がいたしませんでした。ドッペルゲンガーを見た者は…って話が逸れてしまいますね。
主様はわたくしを抱えると、凄いスピードで走り出し、屋根から屋根へと駆ける人間離れした移動方法で、あっという間に五稜郭まで来てしまいました。
暫く外から様子を見ていると、大勢の人間達が重装備で特殊バスに乗り込み、去っていきました。警備が手薄になったのです。
「予想通り、ですね。」
「…今から入るのですか?この中に?」
「今入らないでいつ入るんですか?行きますよ。」
そう言って守衛の目を盗み、素早く入り口を入ってしまいました。
「どうして警備が手薄になると知っていたのですか?」
「知っていたわけではありません。さっき思いついたんです。もしも映像が国中に流れるなら、刀剣の管轄を担う五稜郭が動くかもしれないと。」
そう言いながら壁を垂直に登ってしまい、あっという間に2階入り口部へ侵入してしまいました。
「そうすれば、こうして侵入出来ますし。申請書の奪還は無理でも審神者の契約なら出来ますよね。」
わたくしは二の句が継げませんでした。
普通は、そう思ってもこんなに易々と成し遂げることは出来ないでしょうから。
日本でも有数の警備の厚さを誇る五稜郭が、いとも容易く破られる様は複雑でした。
「…儀式の間の鍵は瀬戸補佐官様がお持ちなので、補佐官様の部屋を訪ねるしかありません。」
「時間もありませんし、強行突破でいきますか。案内をお願いします。」
「お任せあれ。」