第6章 帰り道を探して
「おはようございます。」
レンは燭台切の部屋の前で声をかけた。
貸してあげるから行く前に取りにおいで、と言われたのだ。
しかし、中からは返事がなかった。留守なのだろうか。
レンは一度広間に戻ろうと踵を返すと向こうから燭台切が歩いてきた。
「やあ、おはよう。こんな早くから行くのかい?」
「はい。草刈りなので時間がかかると思いますから。」
「本当は怪我が治るまで休んでいた方がいいんだけどね。
あ、はい、コレ。お弁当だよ。」
レンは若干目を丸くする。
「え?でも晩御飯だけの約束なのでは?」
「さすがに一食じゃ足りないだろ?君は人間なんだから。」
本当に面倒見が良い人だ、とレンは思う。
「ありがとうございます。有り難くいただきます。」
燭台切りは満足気に頷いた。
「あぁ、鎌だったね。ちょっと待ってて。」
そう言うと、部屋の中に入っていき、鎌を出してくれた。
「では、行ってきます。晩御飯お願いします。」
そう言って、近くの塀を飛び越え出かける。
いってらっしゃい、と燭台切の声が聞こえた気がした。