第45章 突入
それを聞いた山姥切は眉を顰める。
そして逡巡した後、自身の刀を鞘に収め、帯から抜いた。
「これを代わりにやる。それでどうだ?」
周囲にいた政府の刀剣達は息を呑む。
「あなたの刀ですか?」
「そうだ。」
レンは少し間を置いてから氷を解いた。
痛みで顔を歪めながら鴉の刀をゆっくりと引き抜く。
「同時交換といきましょうか。」
そう言って、鴉とその刀を2人の間に縦方向に置くと、少し距離を取る。
山姥切も自身の刀を鴉の隣へ縦方向に置き、距離を取った。
「これでいいか?」
「はい。では交渉成立ということで…。」
レンは山姥切を手にする。
「確かに受け取りました。」
政府の刀剣達が隙を伺い、じりじりと詰め寄ってくる。
「来ないでください。あなた方の仲間を折られたいですか?」
レンの牽制にピクリと反応し、動きが止まる。
「よせ。深追いするな。」
山姥切も止めに入る。
「しかし…!」
「いいから。」
山姥切が抑えたのを見ると、レンはこんのすけに向き直る。
こんのすけは意を汲み頷くと、金の鈴を差し出した。
それを受け取ると、片手でぎゅっと握り込む。
「我が言霊に従いて、その力を解放せよ。」
そう唱えると、金の鈴が壊れ膨大なチャクラがレンに流れ込む。
彼女は休む事なく、懐から方陣が描かれた紙札を出すと、チャクラを一気に練り上げ、流し込む。
「我が力を以て、彼の者達を我が本丸に召喚す。我が言霊に応えよ。」
レンが唱えると、紙札は宙に浮かび、球状に形を変えると、鶴丸達を包み込んだ。
彼等は見る間に淡い光となり、その場から消えてしまう。
レンはごっそりチャクラを使い切り、今にも気が途切れそうになるのを気力で踏ん張った。
「こんのすけ…、お願いします。」
「お任せあれ。」
こんのすけはそう言うと、燭台切を目印に自身とレンを本丸へと飛ばした。
「やられたな。」
山姥切は苦く笑いながら、彼等が消えた場所を眺めていた。