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君に届くまで

第45章 突入



「一杯食わされたようだな。」

山姥切は、呆然とした面持ちで加州の方を見たまま動かなくなった鶴丸に声をかける。
鶴丸はハッとして刀を構え直した。

「あれは身代わり人形だったんだろう?」

そう言いながら、山姥切はまた斬撃を繰り出す。
鶴丸はぎりぎりで躱しながら歯噛みした。

「お前達は騙されたんだ。」

「黙れ…!」

「投降しろ。悪いようにはしない。」

「黙れ!」

鶴丸は今し方起きた出来事を受け止める事が出来ずにいた。

何故。どうして。

そればかりが頭の中で繰り返される。

俺達は担がれたのだろうか。
レンにいいように利用されたのだろうか。

その思いがぐるぐると巡り、鶴丸から戦意を奪っていく。

幾筋か刀を受けている内に、背中に何かが当たる。

加州だった。
彼も同じなのか、覇気が無い。
攻撃もままならず至る所に擦り傷を作っていた。
防戦一方で、ここまで押されてきたらしい。
その隣には燭台切も見えた。

「光坊…!」

彼は自身の血で染まった手で刀を構えている。

皆、押しに押され、一ヶ所に追い詰められてしまったのだ。

「弱いものだな。頭を潰すだけで簡単に制圧できてしまう。」

山姥切は可哀想な者を見る目で鶴丸達を見回した。

「これで終わりだ。」

山姥切達は、それぞれ渾身の一撃を繰り出す。
対する鶴丸達は、心身ともに満身創痍の状態であり、刀を受けるだけの余力はもう無かった。

ここまでか…。

彼等の中に、諦めと死の影が滲む。

燭台切は、立ち上がる事もままならず、膝をついたまま目を伏せた。
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