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君に届くまで

第45章 突入


「不動…!」

不動行光だった。
厚が悲痛な声音で呼びかけるも、ぴくりとも動かない。

レンはそのまま離さず、チャクラを微量に流し続ける。

「呼びかけ続けてください。気がつくかもしれませんから。」

やがて完全に時間遡行軍の姿は消え、眠る不動だけが残る。全身傷だらけだ。

「不動…!起きてくれ、不動…!」

「不動。起きて。」

厚に続き、皆で呼びかけると、不動は薄ら目を開けた。

「不動、わかるか?」

「…あ…つ…?」

「そう、そうだ。俺だ。厚だ!」

「不動さん、そのまま質問に答えてください。あなたを禍ツ神に堕としたのは誰ですか?」

不意に聞こえた声に、不動はぼんやり考える。

「…わから…ない。」

「…辛いでしょうが思い出してください。」

静かに問う声に不動は素直に従い、最後の記憶を手繰り寄せる。
火が轟々と燃える中、時間遡行軍を引き連れて入ってきたのは…、

「…黒髪…で…、五…虎退…に…そっくりで…、」

その男が近づいてきて、刀を抜いて…、

「…刺され…たんだ。痛くて…、苦しくて…、なんで…、なんで…俺が…こんな目に…。」

不意に不動の中に怒りと悲しみが込み上げる。

「不動…。」

厚は鎮痛な面持ちで不動が包まれる氷に手を当てた。

「先日、私はこの刀剣を時間遡行軍に変えた男と戦闘になりました。その者は実践して見せてくれましたよ。時間遡行軍に変えるところを。」

今度はレンの言葉に野次を飛ばす者は誰もいなかった。

「もう一度、要求します。本丸の”抹消申請書”と” 新規建設申請書”を撤回してください。」


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