第44章 制圧
議会場の側まで来ると、中から怒号の飛び交う音が聞こえて来る。勿論、ドアの前には誰もいない。
「誰も気付いてないのかな。」
「そうみたいですね。」
レンは念の為、ドアに耳を近づけて会話を聞き取ろうと試みる。
1人が話しているのに対して、次々にヤジを飛ばしているように聞こえる。発言者の言っている事が全く聞こえない。まるでアカデミー生の集まりのような集会だ、とレンは思う。
「あれ、そういえばこんのすけは?」
燭台切は思い出して、きょろきょろと周囲を見回す。
「ここです。」
レンが答え、そちらを向くと、彼女の腕に抱えられて寝ているこんのすけがいた。
「…いつ寝たの?」
「…さぁ。気づいたら寝てました。」
レンは、燭台切を見る事なく答える。ドアの状態を調べると鍵はかかっていないようだ。
手前に引くと、簡単に開いた。
「入れそうですね。その前に一つ、私と約束してください。」
レンは彼等に向き直り、正面から見据える。
「”何があっても”、決して自分の命を諦めないでください。最後まで足掻き続けてください。」
「…ここまで来て何があるって言うんだよ?」
太鼓鐘が怪訝な顔でレンを見る。
「既に今、普段だったらあり得ない状況だよね。」
大和守が肩を竦めて困ったように笑う。
「とにかく約束です。いいですね。」
刀剣達は、レンに少し違和感を感じつつも神妙に頷く。
彼女はそれを見届けてから前に向き直った。
「では、行きます。」
いよいよ、突入だ。