第44章 制圧
その時、当の本人がやっと目を覚ました。
起きてすぐ、綺麗な顔が目の前にあり、瀬戸は状況が理解できずにいた。
「キミのペンを借りたぞ。ありがとう。」
鶴丸は輝くような笑顔でお礼を言い、瀬戸の胸ポケットにペンを戻す。
瀬戸は、尚も状況が理解できずになすがままだ。
ふと、体を動かそうとして動かないことに気づく。
どうにか体を捻って確認すると、手足が一つに固定されていた。
「な、なんだ!?」
「鏡、ありました!」
その時、五虎退が何処からか手鏡を見つけて来てレンに渡した。勿論、五虎退は事情を知らない。
「ありがとうございます。」
レンは、すぐ様それを瀬戸の前に差し出した。
そこにあったのは、いつもの自分の顔ではなく…。
「なんじゃこりゃ〜!!」
酷い落書きで面白おかしくされた自分の顔だった。
これには他の衛視達も堪えきれずに吹き出した。
「ねぇ、何の騒ぎ?向こうの方にもすっごい笑い声が響いてたよ。」
そこへ加州と大和守も合流する。
「ちょっとした、大作を描いてたんだ。」
「誰が大作だ!」
鶴丸の説明に、寝転がって手足を一つにされた男が噛み付いた。こちらを振り向いた顔には、見事な落書きが描かれている。
「「あはははっ!!」」
笑ってはいけないとわかっているのについつい笑ってしまう。
「もう、緊張感ない事して。笑っちゃったじゃん。」
加州が笑いを堪えて苦情を訴える。
「なんだぁ?何の騒ぎだ?」
太鼓鐘をはじめ、残りの面々が衛視を捕まえて戻ってきた。
「見てくれ!」
鶴丸が得意気に指さす方を見ると、
「「「あはははっ!!」」」
笑わずにはいられなかった。
「鶴さん、何してんだよ!傑作じゃねぇか!」
太鼓鐘に至っては腹を抱えて笑っていた。