第44章 制圧
「じゃ、一本勝負で。」
「よっしゃ!負けても吠え面かくなよ!
おい、斉藤。合図出してくれよ。」
「…お前、この状況でよくそんなこと言えるな。
よーい、はじめ!」
斉藤と呼ばれた男は、呆れ返りながらも合図を出す。
「おりゃ!」
瀬戸は、掛け声と共に勢いよく襲いかかる。打撃に蹴りにと攻撃を繰り出すが、レンは難無くひょいひょいと避けていく。瀬戸は武道の心得があるのか、打撃も蹴りもいい型をしている。
「なんだぁ?怖くて反撃出来ないか!?」
瀬戸がそう言った瞬間、レンの動きが変わる。
するりと瀬戸の攻撃を躱し、素早く懐に入ると、そのまま鳩尾に掌底を喰らわした。瀬戸は防御する間も無く、白目を剥いて仰向けに倒れ込んでしまう。
あまりの一瞬の出来事に、辺りがしぃんと静まった。
「はぁ、やれやれ。やっと静かになった。」
レンは瀬戸の手足を一つにまとめ、氷で固めてしまう。
「ゔ…。」
態勢が苦しかったのだろう。気を失いながらも呻き声を上げた。
レンは気にする様子もなく、瀬戸の胸ポケットを漁り、入っていた油性ペンを見つけるとニヤリと笑った。
「鶴丸さん、いい物見つけました。」
これに悪戯好きの鶴丸の目が輝いた。