第44章 制圧
「おい、こいつしっかり縛っとけ。」
大倶利伽羅が警備員の一人を引きずってきた。
手こずったらしく、彼の服や髪は乱れていて、口端が少し切れていた。
「大丈夫ですか?」
レンは、大倶利伽羅を見ながら尋ねた。
ぞんざいに転がされた男の手足にそれぞれ氷の錠をかける。
それを見届けた大倶利伽羅は、レンの問いかけに答える事なく、寝ている男の腹に何かを投げて、また戻っていく。
レンは気になり拾い上げると、どうやら名札のようだ。
「せと かいと。えいし、衛視?」
聞き慣れない言葉に名札を見ながら怪訝な顔をする。
「…国会は初めてか。」
不意に側から声がかけられた。どうやら名札の持ち主が起きたらしい。
「はい。初めて入りました。」
「何しにきたんだ。こんな事をしてただで済むと思ってんのか。」
「目的を果たす為に来まし…」
「悪いことは言わねぇから今すぐ俺達を解放して去れ。」
レンが最後まで言い終わらない内に瀬戸は言いたいことを言う。
「嬢ちゃんみたいなひ弱に何ができるってんだ。国会は国の重要な場所なんだ。テロなんて出来ない。すぐに掴まるだけだ。」
「それは出来ません。」
「捕まえました。」
その時、江雪が警備員を引っ立てるようにして連れてきた。
「お前も捕まったのか。」
瀬戸は自分を棚に上げ、呆れ顔で相手を見た。
「お前もだろうが。」
江雪に引っ立てられた男は半眼で瀬戸を見る。
レンは黙ってその男に近づくと、瀬戸にしたように手足にそれぞれ氷の錠を嵌めていく。