第43章 束の間の休息
「こんのすけがいると、火種を探すのに苦労しなさそうだね。」
こんのすけの隣でその様子を見ていた小夜は、静かにそう言いながら、優しく毛並みを撫でた。
こんのすけは気持ちよさそうに、小夜の手に身を委ねる。
やはり輪の中は居心地がいい、とこんのすけは思う。
「ということで、時間遡行軍のことを交渉材料にしていいですよ。切り札はまだありますし。」
レンは大倶利伽羅を見ながら言う。
強力と言える切り札をあっさり譲り渡した彼女に、大倶利伽羅はどう反応していいのかわからない。
「でもそう上手く行くかな…。もしも、政府が交渉に応じなかったら?」
乱が人差し指を顎に添え、考える仕草をしながら問いかける。
「或いは問答無用で皆殺しということもあり得ましょう。訴える暇さえ、与えられないかもしれません。」
江雪が不穏な予想を立てる。
「応じない、ということはまず無いでしょうね。」
「どうして?」
太鼓鐘が問う。
「時間遡行軍の正体が刀剣男士であるという事実は、たぶん政府にとって脅威になり得るんじゃないですか?」
「けど、白を切られたら終わりな気もするよ?」
乱が不思議そうに尋ねる。
「だとしても、知らなかった、で済む問題ではありません。信用を疑われるんですから。
刀剣男士を統括する組織として、政府は今まで莫大な恩恵にあずかっている筈です。
それが正体が公になる事で、色々な不利益を被ることになるんですよ。重大な秘密を隠していたとされ、糾弾されるかもしれない。或いは、今日までの戦歴の自作自演を疑われるかもしれない。
間違いなく、これから受ける恩恵は無に帰すでしょうね。」
「そうか、それがこんのすけが言ってた”信頼は地に落ちる”って事なのか。」
「そっか。なら”地位を失くす”ってのも頷ける。」
「ざまあみろ、だね。確かに。」
厚、乱、加州が言う。