第43章 束の間の休息
「交渉を持ち掛けてみましょうか。」
そう言うと、彼女はニヤリと笑う。
「交渉?何と交渉するの?」
「え?五稜郭に行って交渉するの?」
燭台切と乱の問いかけに、彼等は怪訝な顔でレンを見る。
「まさか。五稜郭には行きませんよ。
交渉する材料は、時間遡行軍の正体です。」
「それ、ダメなやつじゃん。時間遡行軍の正体の暴露こそ、レンが最もやりたい事でしょ?」
加州は眉を顰めてレンに問いかけるが、彼女は飄々としていた。
「体面に傷を付けるには一番効果的だと思っただけで、別にそこに拘りはありませんよ。それに、こんのすけが言っていたでしょう?身内というだけで"審神者に配属してはならない”のだと。それを、こんのすけをはじめ、あなた方が今まで審神者にされた事と一緒に訴えれば、証拠は無くても”世論”や”倫理観”を揺るがす事は出来るんじゃないですか?
組織において、規律違反は位が上である程厳しく言及されるものですし。」
経験に寄るものなのだろうか。レンの言葉には説得力があった。
「…確かに。”スキャンダルになる”って言ってたしね。」
一理ある、と燭台切は頷いた。
「名前を出せば、尚効果的ですよ。そいつが一斉放火を浴びますから。」
ニヤリと笑うレンが悪魔に見える。
「更に言えば、わたくしが連れ去られることは、前田様にとっては全くの想定外だったのではないでしょうか。わたくしはこの本丸の要である故、節子様の代からずっと見てきました。その間、政府にとって”不都合な場面”にも何度か立ち会っています。」
「つまり、まだまだ切り札を持っているってことですか?」
「はい。あなた様の事も然り。ですから、政府は何が何でも”わたくし達”を消しにかかるでしょう。」
こんのすけは何処か吹っ切れた様に、穏やかな笑みを浮かべる。