第43章 束の間の休息
すると、それまで黙っていた大倶利伽羅が口を開いた。
「”抹消申請書”と” 新規建設申請書”さえ手に入れれば、こんのすけと本丸は消えずに済むんじゃないか?なにも国会議事堂に乗り込むなんて危険なマネしなくたって、事は済む。」
彼の言葉に刀剣達は一斉に大倶利伽羅に振り向いた。
「…確かに。」
と、太鼓鐘がぽつりと呟く。
「その2つさえ手に入れば、何も大挙して行かなくたって、またレンと誰かが五稜郭へ侵入すればいいんだもんね。」
乱の言葉に皆が納得する。
「それは警備が緩い場合はそうでしょうね。」
レンの相槌に大倶利伽羅は眉を顰めた。
「どういうことだ?」
「奴等だって馬鹿ではないはずです。私達が一度侵入し、派手に暴れ回ったのだから、警備は強化されている筈です。人間と刀剣がセットで現れたら、最大級の警戒態勢を敷かれると思いますよ。」
「なら、あんた一人ならどうだ?」
「私1人ですか…。」
大倶利伽羅の提案を受けて、レンは暫し考える。
「そもそも、その申請書は今何処にあるのですか?」
彼女はこんのすけに顔を向けると問いかけた。
「…何とも言えません。その書類が今何処まで回って誰が持っているのか、聞いて回るしか辿る手立てがありません。」
こんのすけは悔しげに視線を下に向ける。
「書類の在処がはっきりしないのなら、忍び込むのはかなりのリスクを負うことになりますね。それにこんのすけがこちらにいる以上、向こうはその書類を狙ってくることは想定している筈です。」
「更に言えば、書類を奪われてもまた書き直せばいいので、イタチごっこになりましょう。その間に新しい審神者を立てられでもしたら、また同じことの繰り返しとなります。」
レンに続き、こんのすけも待ったをかける。
大倶利伽羅は、悔しげに舌打ちをするとまた黙り込んだ。
「まぁ、目の付け所は悪くはないですよ。」
レンは、見かねて大倶利伽羅を擁護する。
だが、彼はレンの方をちらりと見ただけで、それ以上答えることはなかった。