第1章 始まり
不意に意識が浮上する。
強い日差しが降り注ぐのが瞼の裏側でもわかった。
そっと目を開けると視界一杯に青が広がる。吸い込まれる様な澄み渡る青空だ。
暫くゆっくりと通り過ぎる雲をぼーっと眺めていた。
風が時折柔らかく吹き抜け、背の高い草を揺らしていく。
ゆるゆると痛みが湧き上がった。脈打つ度にズキズキと異常を訴えている。
ーそうだ、あの遺跡でクナイを投げられて…
ふと肩口に手を伸ばすと上腕の肩に近い箇所の肉が抉れていて、手にべっとりと血が付いた。
それを見て一気に痛みを自覚する。
次いで大腿辺りを手探りで確認するとクナイが刺さったままになっている。
ー生きている…?
助かるとは思っていなかった。
あの人数相手に逃げ切れるとも勝てるとも思っていなかった。
終わりだと思ったからこそ、一か八かの賭けに出たのだ。
あの遺跡は時空間忍術の類であることは分かっていた。
ただどこに飛ぶのかがわからなかった。術が正確に発動するとも限らなかった。
彼女はゆっくりと上体を起こすと、大腿に刺さっているクナイを引き抜き、地面に突き刺した。目印にする為だ。
そしてゆっくりと立ち上がる。
周囲を見渡してみると、見渡す限りの草原と森が広がっていた。