第1章 始まり
「解!!」
ここはつい最近まで彼女が調べていた遺跡だ。
彼女は遺跡の発掘・調査を生業としている。
貴重な文献の一つである遺跡に然るべき処置を施してもらう為、良い状態で保存し、然るべきところに渡すのが仕事だ。
だが今はそんな事に拘っている場合ではない。
封印を解くと、足元が急に消え、階段一段分下がった。
封印を施したのは彼女だ。ここに何があるのか知っている。
この広間は正六角形の様な形になっており、中央部には正六角形の石畳が5、6段に重なった祭事を行う様な祭壇になっている。
つまり、彼女のいる場所は段差一段程で済んでいるが、彼女を追いかけ来た忍達の足元は子供一人分程度は下がったはずだ。
「何が起きたんだ!?」
男達が驚きの声をあげるのが、あちらこちらから聞こえてくる。
すかさず彼女は祭壇に刻まれた方陣の中央部に手を当て、ありったけのチャクラを練って流し込む。
それと同時に煙幕が晴れ、風が渦巻く。どうやら敵方が風遁で吹き飛ばしたらしい。
方陣が反応し、光を放ち始める。
「おい!あれを止めるぞ!」
男達の焦った声があちらこちらで上がり、一斉に印を組むのが視界の端に写る。
彼女はチャクラを流し続けなければならない為、ここを動くわけにはいかない。
間に合わないかもしれないと覚悟した時、方陣から真昼の様な光が放たれ、辺りを照らしていく。
同時に多方向から、水や火の玉、土の塊等が飛んでくる。
しかし、それらは急にぐにゃりと歪み、彼女に当たる前に光に飲み込まれる様にかき消えた。静寂と光が辺りに満ちる。
同時に意識も遠退いていった。