第43章 束の間の休息
「そこまでご存知であるならば、知っておいた方が良いでしょう。鴉、とは。あの者は、刀剣男士です。」
レンは、その答えに納得が出来ず、怪訝な顔をする。
「しかし、通常の刀剣男士にあらず。あの者は蠱毒を作る様に、混ぜ合わされた者です。禍ツ神に堕ちてしまった加州清光、五虎退、山姥切国広。この三振りが殺し合いの末、生き残り、混ぜ合わせて打ち直されました。
あの者は、他の刀剣に邪気を流し込むことが出来る、政府の剣で御座います。」
刀剣達は言葉を発することが出来ず、只々黙って聞くしか出来ない。
「何の為にそんな物を作ったんですか?」
「わたくしにもわかりませぬ。実験をしたかったのか、時間遡行軍を解明したかったのか。どちらにせよ、人の道に外れているのは確かです。」
こんのすけは憤りを滲ませる。
「事が公になれば、政府の信頼は地に落ちるでしょう。今まで築いてきた政府としての地位を失くすのです。だから、時間遡行軍の事も鴉のことも、極秘となっているのです。」
「そうですか。ならば大々的に公にするには何処が適していますか?」
「お、公にするおつもりですか?」
ーこの方は聞いていたのだろうか?
極秘になっていると言ったばかりではないか。
「極秘だからこそ、面子を潰すにはもってこいのネタじゃないですか。どうせ消されるなら、奴等の体面に傷一つでも付けてやりたいと思いませんか?」
ーそうか。人間だからこその発想かもしれない。
消されるのだから、それを静かに待つのが倣いである、というのは管狐だからこその考え方なのだろう。
こんのすけは破天荒なレンの考えに、自身の政府への忠誠が馬鹿らしく思えてきて、思わず笑いを零す。