第43章 束の間の休息
誰かの話し声が聞こえてきた。
ぼんやりとしながら目を開くと、白い毛布が目に映る。その向こうには、ティーポットと湯呑みが置いてある。なんてちぐはぐだ、と思いつつ首を巡らすと、広間中央に複数の人影があり、そこから話し声が聞こえて来る。
こんのすけは起き上がり、そっとその人だかりに近づいていくと、レンが刀剣達に囲まれて穏やかに会話をしているのが目に入った。
少し前まで、人間だからと毛嫌いされていたのが嘘のようだ。
本当なら自分もあの輪に入っていたのだろうと思うと、少しばかり切なく思う。
けれども、刀剣達がこうして審神者を囲んでいる様子を見るのは喜ばしくもある。
ーやはり、あの方を審神者に据えたのは間違いではなかった。
束の間ではあるが、刀剣達には平和を享受してもらいたいと願う。
「起きましたか。おはようございます。」
ぼんやりと見ていると、レンがこちらに気づき、声をかけられる。
それに釣られるように、刀剣達がこちらを振り向いた。
痛ましさを滲ませる瞳もあれば、疑いを孕んだ瞳もある。
ただ、共通して言えることは、彼等と自分との間には確かな一線が引かれている、ということだろう。
「さて、寝起きのところ悪いですが、幾つかお聞きしたいことがあります。話してくれますよね?」
その中で、レンだけが何の衒いもなく、真っ直ぐに自分を見据えていることが何だか可笑しかった。
こんのすけは、遣る瀬無さを乗せて少し笑った後、居住まいを正して真っ直ぐにレンを正視する。
「わたくしにお話しできることならば、何なりと。」
こんのすけなりのけじめだった。