第43章 束の間の休息
「まだ話してたんですか?」
レンが欠伸をしながら現れた。
前髪が変に捩れているところを見ると寝ていたのか。
「政府に潜入した時のことを聞いてたんだ。キミ、囮で一体何をしたんだ?」
鶴丸は呆れ顔でレンに尋ねる。
「別に大したことはしてませんよ。捕まえようと頑張ってるから、捕まらないように引っ掻き回して、暴れただけです。早い段階で鴉が出てきたのは予想外でしたが。」
だが、レンはしれっと返す。
「からす、って誰?」
「この本丸を焼け野原にした奴です。凶悪で有名らしいですよ。」
「え!?レン、そんな奴と戦ったの!?」
乱が驚いて身を乗り出した。
「影分身が、ですがね。」
「勝ったのか?」
当然、勝っただろう?という思いを込めて鶴丸が尋ねると、
「いや、やられました。全力でかからないと、まずい奴ですね。」
レンはあっさり負けを認めた。
「やられたって、この前みたいに殴られたの?」
「左肺を貫かれました。本体で戦ってたら致命傷でしたね。」
何でもないことのように言うが、影分身でなかったら一大事である。
「ちょっ、嘘でしょ!?」
「次会ったら絶対回れ右して逃げて!!」
加州は頭を抱え、大和守はレンに泣き縋る。
「本体で出会さなければ、然程問題ないと思われます。気に入られている節があるのが気になりますが。」
「え?それどういうこと?」
燭台切が顔を引き攣らせる。
「”待ち侘びた”みたいなことを笑顔で言われました。そして、私をズタズタにしたいそうです。赤が似合うと褒められました。」
レンは、やれやれと肩を竦める。