第43章 束の間の休息
よく晴れた長閑な昼下がり。
広間の庭先で2つの光が現れる。
「おかえり〜!!」
乱は待ち構えていたかのように、レンが姿を表した瞬間に飛びついた。
かなりの勢いだったにも関わらず、レンは少しよろけただけで、乱をそのまま受け止める。
「お、重い…。」
レンは、降参とばかりに顔面に張り付いた乱の背中をバシバシ叩く。
「その辺にしてやれよ。大将が窒息するぞ。」
薬研の制止に、乱は渋々レンから離れた。
「本当にこんのすけを連れてくるとはな。」
大倶利伽羅は加州の腕の中を覗きながら驚く。
奪還は半ば無理だろうと踏んでいたのだ。
「はは…、もうホント凄かった。二度と行きたくない。」
加州はやつれた顔をしながら乾いた笑いを零す。
「なに?何があったの?」
大和守は興味津々に加州に詰め寄る。
「俺も興味あるな。どうやって政府に潜り込んで、無傷で帰って来れたんだ?」
薬研も身を乗り出す。
「いいよ、話してあげる。」
ーこんなに苦労したんだ。
是非ともみんなに聞いてほしい。
これを話さずにいられるか!
加州は、近くに置いてあった誰かの毛布の上にこんのすけをそっと下ろすと、縁側に座る。
そして、事の顛末を最初から細かに話し始めた。
当然、興味を示したのは大和守や薬研だけじゃない。
本丸で待っていた皆が気になっていた事だ。
彼等は一人残らず加州の周りに集まり、彼の話に耳を傾ける。