第42章 囮
近くの遊歩道に入り、人の目を盗んで茂みに入ると、素早く隠れた。
「こんのすけの様子はどうですか?」
「まだ眠ってる。何してもきっと起きないよ。」
その様は、少し前の大和守を彷彿とさせ、加州は眉を顰めた。
レンはこんのすけをそっと撫でてみると、僅かにビリビリとした感触があった。
邪気がまだ抜けないのかもしれない。
「……、」
急にレンの様子が変わり、加州が不思議そうに見ると彼女はニヤリと笑う。
「あいつ、鴉って言うらしいですよ。」
「あいつ?」
「本丸を焼け野原にした奴です。」
「あぁ、レンの気配を感知したっていう?」
「そいつです。」
「何で知ってるの?」
加州が怪訝そうに聞くと、
「今、影分身が解けて情報が入ったからです。
今頃、現場はパニックでしょうね。」
ざまぁ見ろ、と言いた気にレンは鼻で笑う。
それにしても、と加州は思う。
「はぁ…、生きた心地がしなかった…。
けど、よく思いついたね。外から逃げようなんて…。」
潜入の最初から最後まで、はらはらしっぱなしだった。
もう一度潜入して来いって言われたら即行で逃げる。
「誰が馬鹿正直に正面から出るもんですか。」
レンは少し呆れ顔を浮かべて肩を竦めた。
「…レンがずる賢くて助かったよ。」
加州は心の底からそう思った。