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君に届くまで

第42章 囮


加州とレンは、建物に沿って門を目指す。
途中で外を巡廻している警備員に、水泡幻華で軽い幻術をかけて、警備の目を誤魔化す。


「押さないで下さい!!」

「順番ですよ!!」

「必ず避難できますからね!落ち着いてください!!」

上からでも凄い騒ぎだと思ったが、その渦中に入ると一層騒がしかった。

「何やってるんだよ!早く出してくれよ!」

「ここから出さないつもりか!?さっきから進まねぇじゃねぇか!!」

彼方此方から、怒号が飛び交う。

「怖いわね。テロですって。」

「殺人犯が入ったって聞いたわよ。」

「警備員が犯人を止められないんだって。」

「バリケードをどんどん突破して、こっちに向かってるって聞いた。」

「一発殴られて、みんなノックアウトだってよ!」

「マジか!そいつどんな怪力男だよ!?」

加州は周囲の声を聞き、一人静かに青褪める。

本当にレンの影分身は大丈夫なのだろうか?
俺達は本当に捕まらないだろうか?
あれこれと想像して、きりきりと胃を痛める。

「いい塩梅で人物像が一人歩きしてますね。これでバレる心配は無さそうですよ。」

レンは周囲の噂を気にも止めず、加州の手を引き、堂々と誘導員の前を通り過ぎる。

2人は呼び止められることもなく、すんなりと出ることに成功した。

加州は、無事出ることが出来た安堵と、道中のあれやこれやで疲れきって、その場でへたり込みそうになるのを気力で持ち堪える。そして、黙々と大通りをただ歩くことだけに集中する。

「概ね、予定通りですね。」

そして、冒頭に戻る。
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